解説も第5回と長くなりましたが、今回はサイドボードについて書いていきます。
なお、当初は解説のみで終わらせる予定でしたが、せっかくなので第6回までとして、いくつかのマッチアップの in&out とゲーム進行の方針まで書こうと思います(時間はかかるかもしれませんが…笑)。

さて、スリヴァー・デッキのサイドボードはおおまかに二つの流れがあり、一つ目はスリヴァーを中心とする構成、二つ目はスリヴァーをある程度の枚数に絞って、シナジーはないけれど有効な対策カードを採用する構成に大別されます。
それぞれに一長一短があり、前者は他のスリヴァーとのシナジーを維持しているためクロックが落ちにくいものの、サイドボードの効果としては限定的、後者は効果が強力な反面、シナジーに乏しく(スリヴァーが複数体並ぶことを前提とした構築では)クロックが細くなりがち、という特徴があります。

私は後者の構成をとっており、サイドボードの機能としては、(プレイのしやすさなどは前提としつつも)刺されば1枚でも勝てる尖ったものを優先すべきだと考えています。ただ同時に、サイドボードを作る際にはそうした1枚で勝てるカードを中心としつつも、他のデッキへ転用できるカードも採用して補助する形としています。
こうした考えは、サイドボードの枚数に対してアーキタイプの数が多いモダン特有の条件下で、非常に重用だと感じています。なお、モダンのデッキが全体的に高速化する傾向もこのあたりに原因があります(=速度で上回れば〈採用枚数が限られた〉数枚の妨害はさほど問題にならない)。
効果的なサイドボードを作るには、まずは環境を渉猟してもっとも効果的と考えられるカードを探し出すことが必要ですし、このデッキにはこれ、あのデッキにはこれ…と考えるのではなく、ある程度環境のデッキを類型化し、このタイプのデッキにはこれ、といった考え方が必要になってきます。
その他、モダンは主要なアーキタイプ以外のデッキも多いため、状況にあわせて柔軟に考えられる構成や訓練も必要ですね(それでも、サイドが30枚くらい欲しくなる時がありますが…笑)。

それでは具体的に第1回の画像にあげたサイドボードを機能毎に解説していきます。
ただし、前述のようにモダンのサイドボードは15枚ではとても足らず、絶えず細部が変わっています。現段階(2018年9月)では、ブリッジヴァイン・青白コントロール・5C人間などの支配率が高いため、それぞれ、虚空の力戦の増量、思考囲いの数の調整や使用可能な専用サイドの選定(沸騰、ガドック・ティーグ、情け知らずのガラクなど…)、倦怠の宝珠の採用などの変更をおこなっています。また、M19の加入に際して、タイタンシフトに対して効果の薄かった大爆発の魔導士を高山の月に差し替えるなどの変更もおこないました。そのため必ずしも第1回の画像の通りとはならないことをご了承ください。

(1)墓地対策

虚空の力線 2(〜3)
大祖始の遺産

墓地対策は3~4枚をメタゲームを見て調整しています。虚空の力線の採用・枚数については疑問に思われることもあるでしょう。
まず力線を優先している理由は、単純に他の墓地対策では間に合わないケースが増えてしまったことがあげられます。
例えばグリクシスシャドウの先手・思考掃きからの2ターン目タシグルや、ドレッジの1ターン目傲慢な新生児からの発掘、ホロウワンの1ターン目虚ろな者からの炎跡のフェニックス&恐血鬼、ブリッジヴァインの1ターン目復讐蔦…など枚挙にいとまがありません。同時に青赤ストームやグリセルシュート、マルドゥパイロマンサーなどへもある程度対策になるのも大きいです。
次に枚数ですが、これは完全にサイドボードの枚数との関係です。もちろん初手にないことも往々としてありますが、それでも力線は出れば大きく有利にゲームを進められ、他の墓地対策に比べてリターンが大きいため優先して採用しています。というかそもそも、現在のモダンでは初手にない墓地対策はそれほど強くない…と割りきって使っています。ここの枚数は上記のデッキがどれくらいいるかの予想によって変動することになります。
一方、大祖始の遺産は虚空の力線とは若干用途が異なり、ジャンド(タルモゴイフ・漁る軟泥・渋面の溶岩使いなど)や青系コントロール(瞬唱の魔道士・アズカンタの探索など)対策として使うことも想定して、散らせて採用しています。対ジャンドや青系コントロールでは力線がハンドアドバンテージを失いやすくそもそもサイドインできないのに対して、遺産はドローにも変えることができて無駄牌になりにくいのが利点です。

なお、墓地対策のパターンは環境にともなって変化しており、少し前は以下の形で使い分けをしていました。

大祖始の遺産 1
虚無の呪文爆弾 1
外科的摘出 1

遺産は前述のように無駄牌になりにくい墓地対策として。他方、遺産は墓地に特化したデッキ相手だと後手で間に合わないこともあったので、呪文爆弾を(1ドローを放棄すれば)後手でも間に合う墓地対策として採用していました。また外科的摘出はグリセルシュートやアイアンワークスなど特定1種のカードを取り除くと動きが遅くなるデッキや、瞬唱を使う青系コントロール用としての役割でした。効果は限定的ですが対ドレッジ戦などでも最初の発掘カードや燃焼を追放するためにサイドインしていましたね。

(2)土地系コンボ対策

大爆発の魔道士 2(or 1枚を高山の月に差し替え)
減衰球

この枠は主にトロン系(緑単・青)やアミュレットタイタンなどへの対策用です。大爆発の魔道士は対コントロール、減衰球は青赤ストームやアイアンワークスへの対策としても転用できます。
ただ、以前のコントロール型のスケープシフトに対しては大爆発2枚でも対抗できましたが、タイタンシフトの登場以降、適切かつ有効なサイドを確定できていません。
大爆発1枚を血染めの太陽に差し替えたこともありましたが、トロンへの対策が薄くなることがネックで結局不採用となりました。現在はトロン・タイタンシフト双方に干渉することのできる高山の月の採用を試行中です(置物のため直接破壊するより信頼度は下がりますが…)。

(3)アーティファクト・エンチャント対策

調和スリヴァー
戦争の報い、禍汰奇

調和スリヴァーは、すべてのスリヴァーに「戦場に出たとき、アーティファクト1つかエンチャント1つを対象とし、それを破壊する」能力を共有します。
スリヴァー・デッキにとっては最上とも言えるサイドカードで、このカードのおかけで、親和(鱗親和含む)・呪禁オーラ・テゼレットコントロールなどに対して優位にゲームを進められます。
特に対親和は、サイドプランのギラプールの霊気格子にも対応でき、さらにスリヴァーの巣があれば無色のスリヴァー・トークンに能力を共有して、刻まれた勇者といったプロテクション持ちも破壊できるようになります。
その他、対トロン(忘却石など)・対青系コントロール(アズカンタの探索・拘留の宝球など)などのマッチアップでもサイドインすることができます。
ただし、この能力は再利用の賢者などと違って強制のため、場合によっては自分のものを破壊する可能性もあることに注意しましょう。また、相手の場にダークスティールの城塞などがある場合は、それを対象にとることで前述の事態を回避することができます。
一方、禍汰奇は完全に親和専用のサイドボードになります。前述の調和が3マナのため、後手で遅れないように1枚を補助用に採用しています。1度でも誘発させることができれば盤面・テンポともに大きなリターンを得られますが、相手の感電波を意識する必要やマナベースの問題もあるなど、リスクがないわけではありません。最近は鱗親和の増加など親和のバリエーションも増えつつあるので、採用する優先度は相対的に低くなっています。

(4)コントロール対策

思考囲い
魔術遠眼鏡
ウルザの後継、カーン 1(or 情け知らずのガラク 1)

思考囲いは対コントロールだけではく、対コンボや対トロン、霊気の薬瓶をサイドアウトする対ミッドレンジでのマッチアップ(ジャンド・アブザン・マルパイ…)など広範囲にサイドインできます。ただし、土地からのダメージと合わせるとダメージレース的に厳しい場合があるので、マッチアップによっては先手のみでサイドインする場合もあります。

魔術遠眼鏡は元々真髄の針だった枠で、対PWが主な役割です。以前にトリコナヒリが流行した時の名残ですが、現在も神ジェイスやテフェリー、ウギンなど対処できない=負けのPWが存在することから、枠を継続しています。
その他、献身のドルイドや渋面の溶岩使い、電結の荒廃者、鋼の監視者などのシステムクリーチャー、また仕組まれた爆薬、忘却石、ミシュラランドといったカードにも広く干渉できるため、専用サイド+αの形でサイドインが可能です。
真髄の針との優劣については、針が後手の時にも対トロンの探検の地図に干渉できたり、コストによるテンポ面で優れている面もありますが、指定を外してしまった場合のリスクを加味すると、ゲームプランを立てやすい眼鏡の方が優れている、という結論になりました。
その他、この枠としてはファイレクシアの破棄者も候補にあがります。こちらはクリーチャーのため信頼度は下がりますが、針・眼鏡と違って(土地は指定できないけれど)マナ能力も封じることができたり、薬瓶や集合した中隊との相性も良好です。とくにマナ能力も封じれる点は、クラーク族の鉄工所やカウンターカンパニーのマナクリーチャーなどへも干渉でき、サイドボードの幅が広がると思われます。

ウルザの後継、カーンは、サイド後にコントロール側がカウンターを減らす or 払拭に差し替える、あるいは全体除去を増やすことを見越して採用しています。
マナベースの関係上、スリヴァー・デッキではダブルシンボル以上のPWの採用は難しかったのですが、このカーンは無色4マナのため、現状ではもっともプレイしやすく、アドバンテージを稼いでくれます。
ただし、トークン生成能力はシナジーがないためほとんど使い道がなく、+能力もデッキ全体のカードパワーが比較的低い(1:1交換以上をとられてしまうことが多い)ため、デッキを掘り進めるくらいにしかならないこともあります。そのため、現在では格闘能力がマナクリーチャーやシステムクリーチャーに有効かつ、トークン生成能力もある情け知らずのガラクを試行中です(稲妻一発で落ちてしまうのがネックですが…)。理想はスリヴァー版の4マナギデオンのようなカードなのですが…(あるわけもなく)、引き続きこの枠は検討中です。

(5)バーン対策

集団的蛮行 2(~3)

対バーンはこちらの速度が追い付かず、かつ環境にも一定数の使用者が見込まれることから専用の枠をとっており、基本的に増呪2回のフルモードで使用することがほとんどです。できれば追加の吸管スリヴァーもサイドに採用したい所ですが、なかなかサイド枠に余裕がありません。
蛮行は対バーン以外でも対カウンターカンパニー、エルフなどにも使え、マッチアップによっては追加の手札破壊としても機能します。

以上がおおまかなサイドボードの解説です。
なお冒頭でお伝えした通り、次回で簡単にいくつかのマッチアップの in&out とゲームの進行方針をまとめて、一連の解説を終わりにしたいと思います。
あまりここでは触れられなかった対5C人間の方針などもそちらでは書きたいと思っています。
やたら長くなってしまったスリヴァーの解説も、段々と終わりが見えてきました。
今回はスリヴァーのマナベースについて解説します。
マナベースについては、カードの優先度の高低によってそれぞれ見方や価値観が違ってくると思いますので、私がどのような意図・経緯でこうした構成にしたのかも含めて、その特徴や役割毎に分類して解説していきます。

③土地

まず土地の総数ですが、当初は22枚で調整を始め、22枚ではマナフラッドを起こしやすい印象だったため21・20枚を検討し、20枚だと集合した中隊やスリヴァーの巣の起動を考えると今度はマナスクリューしやすい印象だったため、現在では21枚に落ち着いています。集合した中隊の数を抑えるのならば、土地を20枚に絞ってもかまわないかな、とも思います。

(1) フェッチベース(10枚)

新緑の地下墓地 4

湿った墓 1
草むした墓 1
血の墓所 1
神無き祭殿 1

 1
 1

緑黒フェッチをベースにしたマナベースです。
前回紹介した菅草スリヴァーの再生能力とロード能力を活かすため、フェッチのサーチ先は黒に偏っています。
緑黒フェッチを軸にして基本土地を森・沼ともに採用していますが、沼は上述の菅草のため、森はマナ編みスリヴァーと集合した中隊のためのものです。
言い換えれば、血染めの月などを置かれた場合もこの2つがそろっていれば何とか展開が可能です。
また、白が絡んだデッキを相手にする場合、数回は流刑への道を打たれますので、最低限の基本土地を採用しています。最近では廃墟の地や残骸の漂着などのカードも加わったので、基本土地の必要性は上がっています(枠が無いので増やせないのがネックですが…)。
またサーチの順序は上述の関係から、緑黒がもっとも優先されます。その後は、メインの場合は手札の展開を考えて、サイド後はサイドカードの色と手札の色とで相談していくことになります。メインの体感は、青黒>白黒・赤黒という所かと思います。
スリヴァーの色が5色に散らばっているため、フェッチベースだけでそれらの色を供給するのは困難を極めます。他方、以前は筋力・捕食スリヴァーの色に対応した寺院の庭を採用していましたが、菅草の修正が入らなくて負けたゲームも多々あったことから、優先度の関係で抜けてしまいました。菅草の期待値を下げればこのあたりは改善されるのですが、その分打点は下がってしまう…というジレンマがありますね。

(2) 部族専用5色土地(6枚)

魂の洞窟 3
スリヴァーの巣 3

まず魂の洞窟は、以前は盲目的に4枚でしたが、以前に晴れる屋の神挑戦者決定戦で10位に入っていたリスト(https://bit.ly/2w7Z02P)を見て考え直し、以下2点の理由で魂の洞窟:スリヴァーの巣を3:3で散らす形にしました。

①モダンではそもそもカウンターがあまり強くなく、またそれらを使用したデッキも支配的とは言えず、絶対数は少ない。
例:マナ漏出、差し戻し、呪文嵌め、論理の結び目、謎めいた命令(これは中盤以降のカードなのでまた状況は異なる)、卑下…等々。
②ロングゲームや調和スリヴァーなどとのシナジーを考えると、スリヴァーの巣の方が有用性がある。

また、スリヴァーの巣は対戦相手からよく能力を確認されるため、以下に能力をおさらいしておきます。

(T):あなたのマナ・プールに(◇)を加える。
(T):あなたのマナ・プールに好きな色1色のマナ1点を加える。このマナは、スリヴァー(Sliver)呪文を唱えるためにのみ使用できる。
(5),(T):無色の1/1のスリヴァー・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。この能力は、あなたがスリヴァーをコントロールしているときにのみ起動できる。

トークン生成能力を備えたスリヴァー専用の5色土地です。
トークン生成能力は5マナ+自身のタップの計6マナで1/1の無色のスリヴァー・トークンとかなり重めですが、マナ編みと組み合わせることで起動しやすくなります。また、調和スリヴァーと組み合わせるとそのETB能力を使い続けることができ、さらにトークンは無色のため、対親和ではプロテクション(すべての色)を持つ刻まれた勇者を破壊したりブロックすることも可能になります。
その他、トークン生成の能力はスリヴァーをコントロールしていないと使えませんが、後述の変わり谷と組み合わせることで、全体除去の後などに土地しか残っていなくとも、起動が可能です。
土地総数との関係で上述のように3枚に抑えていますが、4枚に増やしてもいいと思っています(近々、試してみる予定です)。
なお注意点として、二つ目の能力は起動型能力には使えないため、菅草の再生能力の黒マナを払うことはできません。きっと開発も存在を忘れていたのでしょう…。

(3) 打点補助(3枚)

変わり谷 3
0マナ2/2のスリヴァーです(迫真)。と、いう冗談は置いておいて、正確には多相を持っているためスリヴァーであったり、他の部族でもあります。そのため、対マーフォーク戦ではアトランティスの王の修正も受ける(逆に筋力・菅草などもしかり)ので、打点計算の際は注意しましょう。
デッキ全体の打点を補助し、対全体除去やヴェールのリリアナなど対PWといった消耗戦の際の要でもあります。
色マナカウントにはなりませんが、その打点が重宝するので3枚採用しています。案としては、これを4枚にして土地総数を22枚にするというものもありました。
上述のようにスリヴァーの巣とも相性が良いです。また、拡散スリヴァーと組み合わせると、先に起動しておくことが必要ですが、廃墟の地や幽霊街の対象になった際にも拡散の能力が誘発します。そのため、場合によっては相手のアップキープなどに起動することもあります(廃墟の地の起動を促したい場合…など)。その他、菅草がいればそうした土地破壊カードに際して再生することもできます。

最大の注意点としては、クリーチャー化能力起動のタイミングの問題があげられます。
これは他のミシュラランドとも共通する一般的な知識ですが、ミシュラランドを戦闘に参加させるためには、戦闘開始ステップまでにクリーチャー化能力を起動しておかないと、次の戦闘クリーチャー指定ステップでは能力起動のタイミングはなく、戦闘に参加させることができません。
しかし、もし戦闘開始ステップでインスタントのスペルや能力などによって優先権が発生したならば、能力起動のタイミングが発生します。
ややこしい言い回しになってしまいましたので、具体例を一つあげましょう。たとえば、対青系コントロールの際、数体のスリヴァーと変わり谷をコントロールしていて相手が謎めいた命令を持っている(あるいは打つだろうと想定される)場合には、変わり谷の能力を起動せず、戦闘開始ステップまで進み、優先権を放棄します。すると相手はこのタイミングで命令をオールタップモードで唱える必要がでてきて、命令を解決後に再度優先権を得て変わり谷の能力を起動すれば、変わり谷だけはタップされず戦闘に参加させることができます。
なお、相手が命令を唱えなかった場合は戦場のスリヴァーは戦闘に参加できますが、変わり谷の能力起動のタイミングは過ぎているので、こちらは戦闘に参加させることはできません。

④その他(2枚)

マナの合流点 1
クリーチャー・スペル双方に使える5色を出すことができるため、各色のカウントの補強用として1枚を採用しています。対バーンやタイトなダメージレースをおこなう際にはネックになりますが、他方、各色のスリヴァー・菅草の再生マナ・中隊の緑マナ・サイドボードの色マナ…などなどをカバーできる土地は貴重で、現状では必要悪だと捉えています。
なお、後述するアーボーグがある場合には、沼として黒マナを出せばダメージは受けません。

ヨーグモスの墳墓、アーボーグ 1
菅草による再生可能回数が勝敗に直結する場面があるため、1枚を採用しています。また、このカードがあるため、無理をすれば黒ダブルのカード(ただし3マナ以上)までは採用を検討することが可能です。さらに、副次的な恩恵として、マナの合流点やフェッチを沼として扱うことでダメージを受けなくなるという点もあげられます。
ただし、色マナカウントとしては黒1色のため、マナベースの負担になっている点は否めません。マナベースの検討の際には、真っ先に槍玉にあがってしまう枠ですね。このカードは菅草の重要度とセットで考える必要があるでしょう。

総括すると、スリヴァーとそれ以外の色マナカウントはそれぞれ以下のようになります(注:フェッチを含みます)。

(1)スリヴァー 白:12、青:12、黒:17、赤:12、緑:13
(2)それ以外  白:6、青:6、黒:11、赤:6、緑:7

こうして見ると、黒に大きく偏っているのがわかります。このあたりはまだ改善の余地があると思います。
また、上記の数は緑黒フェッチも含んでいるため、実際に2、3色目…となっていくとカウントは段々と減ってしまいます。さらに1ターン目に特定のマナを出すために必要とされる14枚のラインをクリアしているのが黒のみのため、実際には風乗りスリヴァーや先制スリヴァーを無理なく1ターン目に展開するのには支障があると言わざるをえません。霊気の薬瓶やマナ編みスリヴァーがあるとは言え、スリヴァーのマナベースは大きな課題です。現状では薬瓶を当て込んだ構成のため、サイド時に薬瓶を抜くようなマッチアップではマナトラブルを起こす可能性があり、採用するサイドカードは慎重に検討する必要があります。

以上、最後はかなり悲観的な宿題にはなってしまいましたが…、反面ではスリヴァーはまだまだ研究の余地があり、そして研究がもたらすリターンも大きいデッキであると考えることもできると思います(今はまとまった情報もあまりないので)。

次回はサイドボードを紹介・解説して、一応のスリヴァー・デッキ紹介・解説の終了としたいと思います。余力があれば、簡単なサイドイン・アウトもメモ書き程度に書きたいと思っています(何せ私も探り探りの構築なのでw)。
今回は引き続き、3マナ域とそれ以外に採用を検討したカード、さらにスペル枠について解説していきます。

(3)3マナ域

菅草スリヴァー
すべてのスリヴァーに「あなたが沼をコントロールしているかぎり+1/+1修正」と「黒:このパーマネントを再生する」を共有します。また、素のP/Tは2/2です。
私のスリヴァー・デッキの構築はこのカードが4枚そろった所から始まりました。少なくとも私の構築ではメイン4枚固定で、デッキ全体でこのカードを活かす構造にしています。
ロード能力と再生能力は別個のため、沼がなくても再生能力は共有されます。
単純にロードとしてだけでなく、再生能力を活かしたブロックやチャンプアタックなど、攻守両面で活躍してくれます。
プレイングとしては、黒1マナを立たせてキャストするのが理想で、 霊気の薬瓶があればカウンター3から(2→3に上げる判断が重要ですが、これは後述します)展開していきます。ただ、相手が自分より早いデッキで打点が必要な場合や、拡散が場に出ている場合などはフルタップで出すことも多いです。
最近のカードは再生が破壊不能に置き換わっていることも多く、再生を許さないカード(例:終止・神の怒り・滅び、あとは四肢切断や流刑の道)の種類がモダン環境では限られることも、ゲームプランを考える上で重要です。

吸管スリヴァー
自軍スリヴァーに絆魂を共有します。
採用はメタゲームによって1~3枚と揺れていますが、0になったことはありません。
対5C人間やマーフォークなどの部族系ビートダウンをはじめ、コンボに近いデッキでもドレッジなどクリーチャ ーによる打点が重要なデッキ相手ではダメージレースを崩壊させることが可能です。
他方、クリーチャーという性質上、絆魂による回復が3~4ターン目になる(除去をケアすると更に遅れる)ため、3~4キルデッキを相手にした時、間に合わない場合も多いです。
また、ライフを攻めるコンボでも、アドグレイスやタイタンシフトなどには基本的に相手のダメージの方が高く、間に合いません(サイドアウトします)。
これもメタゲームを見ながら、採用枚数を決めるのが良いと思います。
現状では、部族系とのマッチアップなど出れば強い盤面もあって2枚採用したいけれど、トロン・タイタンシフトなどに対しては強くない…ということもあり、悩んだ末の1枚になっています。

★他に採用を検討した3マナ域

収差スリヴァー
自軍スリヴァーに速効を共有します。
マナ編みや薬瓶、中隊と組み合わせると打点がはね上がるので、環境が高速化した際には積極的に採用しています。また、部族系のマッチアップなどでも先手後手を入れ替えてくれるので重宝します。
一方、単体としては3マナ2/2なので、ロードや風乗りがいない or 除去をケアするとそもそもアタックに行きにくい場面もあるため、中速のデッキが多そうな場合は数を減らしています。
目下のメタゲームでは、タイタンシフトなど純粋に速度がないと絶望的なマッチアップは一時期より減り(私感です)、またカウンターカンパニーなどは除去の方が優先される関係で現状では0になっています。というかほとんどタイタンシフトの数によりますね、この枠は。3マナが少し重いと感じるのがネックです(2マナでハートのスリヴァーの上位互換だったなら…)

誘導スリヴァー
戦場に出ると「各プレイヤーの手札にあるスリヴァー・カードは、スリヴァー・サイクリング(3)を持つ」を共有します。また、自身単体でもスリヴァー・サイクリング(3)を持っています。
スリヴァー・サイクリングをあたえる能力は、対戦相手の手札にも影響します。
基本的に場に出ることはまれで、自身のスリヴァー・サイクリングで状況にあったスリヴァーをサーチするのがおもな役割になります。
状況によって菅草・風乗り・吸管などをサーチする動きが便利で、一時期は菅草以外の3マナ域を吸管1・収差1・誘導1のように散らす形をとったこともありました。ただ、スリヴァー・サイクリングの3マナが重くてテンポを失うことも多く、結局メタゲームを見て吸管・収差を入れ替えるという今の形に落ち着きました。誘導をどうすればうまく使えるのかは、今後の課題と考えています。

壊死スリヴァー
すべてのスリヴァーに「無色3マナ、このパーマネントを生け贄にささげる:対象のパーマネント1つを対象とし、それを破壊する」能力を共有します。
名誉回復を基にして作られたスリヴァーで、マナがかかりますがインスタントタイミングで広くパーマネントに触ることができます。
初期に1〜2枚を採用していましたが、段々とモダン環境が高速化し、最初の2〜4ターンでほぼ形勢が決まってしまうゲームも増えたことから、最終的には不採用になりました。場に出して起動するのに6マナがかかるので、薬瓶がないと間に合わない盤面が大半でした。反面、マナ編み・スリヴァーの巣とあわせて機能しはじめれば盤面をほぼコントロールできます。

陰影スリヴァー
すべてのスリヴァーにシャドーを共有します。
シャドーはモダン環境では99%アンブロッカッブルのため、単体では1/1と貧弱ですが、追加の回避能力が必要になった際に検討しています。ただ、シャドーを持つと、シャドーを持たないクリーチャーをブロックできなくなってしまうため、ほぼ最後の押し込み専用のカードです。

熱狂スリヴァー
すべてのスリヴァーに、0マナでコイントスをして、勝てばターン終了時までそのパーマネントを追放、負ければ生け贄にささげる、という能力を共有します。
非常にギャンブルな能力ですが、50%の確率で単体除去や神の怒り・全ての塵のような全体除去を避けることができます。また、対死せる生では、コイントスに負けても墓地に送ることができますので一応の対策になります。サイドに積むべきかという点は議論になりますが…。
右手が強い人には最強のスリヴァー。右手が弱い私には荷が重すぎました。ただ、使っていてとてもおもしろいスリヴァーなので、そのうちまた使いたいですね(できれば海外GPとかでw)。

好戦スリヴァー
自軍スリヴァーに威迫を共有します。
使用感は双頭スリヴァーとあまり変わりませんでした。違いは素のP/Tが2/2なことくらいかな…。

※4マナ以上のスリヴァーは、集合した中隊の関係もあり(解説参照)現状では採用していません。過去には骨鎌スリヴァーを1枚採用していましたが、引きムラの問題もあり、集合した中隊を軸に3マナ以下に統一した方が安定するという結論に今はなっています。

②スペル
※クリーチャーと比べて数が少ないので、まとめて解説します。また、メジャーなカードが中心なので、それらの詳細は省略しています。

霊気の薬瓶
メインは4枚固定です。展開の要になるとともに、コンバットトリックや、菅草がいれば除去への対応なども出来るようになります。
基本的には、相手に対応する余裕を与えないように相手エンド時に起動するのがセオリーです。スピード勝負で打点が欲しい場合や、相手のマナが詰まっている状態で拡散を着地させたい場合など、メインで起動する場合もあります。
ただし、数点の打点を上げるための不必要なメイン起動は、相手に選択肢を与えることにもなる(返しのターンのソーサリータイミングの除去など)ので禁物です。
相手に使われることも含めての注意点ですが、戦場に出す所までが一つの能力のため、何を出すかを見てからの対応はできません。
薬瓶を使うデッキはある程度限られ、土地の色と合わせておおよその予測は可能なので、薬瓶を相手にする場合は何が出てくるかを考えながら、プランを立てる必要があります(例えばレオニンの裁き人など)。

★薬瓶のカウンターは2か、3か
一般的に、スリヴァーは2マナ域が多いので薬瓶のカウンターを2で止めることが多く、おおむね正しいとも思います。
ただし、私の場合は菅草のために積極的にカウンター3まで進めることが多いです。
もちろん、手札に2マナ域が多い時は展開を優先しますが、中~終盤の、トップで菅草を引けば有利にコンバットできる盤面の時や、除去に対するブラフが重要な時は、菅草が手札になくともあえて3まで進めます。

四肢切断
ライフを4点払えば無色1マナで打てて、かつ広いモダンのプールでもある程度のクリーチャーを除去できる貴重なカードです。
バーンを相手にする際などはネックになることもありますが、マナ基盤に関係なく打てるという点が最も重視して採用しています(そもそも、カードはプレイできなければ入っていないのと同義)。
ただし、運用上は除去というよりほぼクリーチャーコンボ対策で、見方によってはレガシーの意志の力のような役割です。
※例:献身のドルイド、聖遺の騎士、鏡割りのキキジキ、修復の天使、守護フェリダー、テューンの大天使、遵法長バラル…等々
枚数が少ないので、とくに負けに直結するクリーチャーに対してや、最後の押し込みの際に使いますが、判断が難しい時もあります(とくにカウンターカンパニー)。
かつての双子リーガルの時代にはメインで3枚を採用していましたが、今はそこまで支配的なク リーチャーコンボはいないので2枚になっています。ただ、前述のカウンターカンパニーのように、ドルイド・聖遺・トラッカーなどマスト除去が多いデッキもいるので、適切な枚数は難しい所です。

集合した中隊
このカードを最初に見た時はさすがに目ん玉が飛び出ました。スポイラーの感想は、はいはい手札ね…え、戦場!?って感じでしたね。
大きくスリヴァーデッキの方向性を変えたカードです。マナ編みの数が増えた一方、それまで1枚差しで採用していた骨鎌スリヴァー(4マナ、二段攻撃共有)やスリヴァー軍団(5マナ、他のスリヴァーの数だけ+1/+1する能力を共有)、巣主スリヴァー(5マナ、破壊不能共有)などは完全なベンチウォーマーになってしまいました。その他、サイドボードも、中隊で戦場に出せるクリーチャーのものが増えました。
基本的にはこれも相手のエンド時や大振りの動きに対応して打ちますが、相手のマナが詰まっている時や拡散が出ると有利な場合は、メインでも打つことが多いです。
横並びが苦手なシャドウ系や、除去で1:1交換しつつクリーチャーの質やアドバンテージで攻めてくるジャンドなどには、一回打つとそのテンポ差で盤面を有利にすることができます。
相手エンド時に薬瓶のカウンター2からマナ編みを出し、中隊に繋げる流れは4キルの黄金の勝ちパターンです。
ただし、過信は禁物です。現状のリストでは土地21の緑マナカウント7と、4ターン目に打つにはギリギリ(人によっては無謀とも思える)のラインです。1~2マナ域で統一されたモダンのバーンデッキなどでも、土地が19~20枚であることを想起すると、その重さは顕著でしょう(バーンは土地3までのばさないと2回行動しにくいというのもありますが)。またマナ編みは真っ先に除去されやすいので、マナ編みを当て込んだキープも裏目が大きいです。
マナ編み・土地2・中隊…とキープ して、除去が飛んできてマナスクリューして負け…というのは黄金の負けパターンと言ってもいいですね(自分では「中隊負け」と呼んでます)。
また、モダンで中隊を使うデッキ(カウンターカンパニーやエルフ)は一様にスリヴァーより早い、というのも辛い所です。後手の際には中隊をサイドカードに差し替える(その分、打点は下がってしまうのがネックですが…)という判断も必要です。
一時期、3枚にしたこともありますが、やはりデッキの中で一番強いカードなので、4枚で現在は固定しています。

〇その他、過去にメインで採用したことのあるスペル

密輸人の回転翼機
最序盤の打点アップやブロックを見越して、一時期1~2枚を採用していました。
とくにルーティング能力は中~終盤のマナフラッド回避や薬瓶の処理などのためにとても重宝します。また、相手の全体除去やPWによる除去などへの布石にもなりえます。
とても良いカードなのですが、中盤以降は打点アップにあまり貢献しなかったことや、相手の除去の優先度も高く、そもそもルーティングしづらいこと、何よりも環境の高速化で打点の上がるスリヴァーカードでの統一を優先したことなどを受けて、現状では採用していません。しかし、環境が今後中速化するようなことがあれば、また採用を検討しようと思います。

致命的な一押し
一時、紅蓮術士の昇天デッキが流行し、かつシャドウ系が増えた時に、氷の中の存在や死の影対策に1~2枚を四肢切断に追加して採用していました。
バーンや感染など、最序盤で除去したいクリーチャーが多い場合にも有効です。一方、スリヴァー・デッキの場合、能動的に紛争を達成できるカードが4枚の緑黒フェッチのみということもあり、エルドラージ系の数が増えるにつれて枚数が減り、現状では不採用になっています。

大祖始の遺産
かなり以前に、時を越えた探索や宝船の巡航などの探査カードが支配的だった時期に、メインに2枚ほど採用していました。瞬唱の魔導士やタルモゴイフを使うデッキにもある程度効果があります。
ドローにもなるので無駄になりにくく、同様の採用はマーフォークなどでも当時見られました。現在も墓地を使うデッキはメタ上にあるので、そうしたデッキが支配的になった際には(モダン環境ではデッキ数そのものが多く、なかなかリスクがありますが)、検討の価値はあると思います。

最後の望み、リリアナ
消耗戦を見据え、違った軸で攻められるPWカードを採用したくて、1枚を一時期採用していました。マナベースの関係上、黒が濃くかつコストがの軽いものが使いやすく、最もデッキにあっているだろう、ということから白羽の矢が立ちました。
使用感は悪くなく、従来は対処しにくい闇の腹心やマナクリーチャーにさわれるようにもなります。ただ、献身のドルイドのようなタフネス2以上のシステムクリーチャーにはさわれなかったのは難点でしたので、結局は優先度の関係から不採用になっています。ただし、このカードもメタゲームによっては充分採用の価値があると思います。
前回の記事への反応が意外に多かったことに驚きました。
思えば主要デッキ以外の解説ってあまりありませんし、スタンダード(あるいはレガシー)に比べてモダンはプロからの発信も表層的だと感じています。

さて、今回はスリヴァー・デッキの2マナ域から解説を進めていきます。
なお、スリヴァーに関する一連の記事は、紹介というよりは今までの思考過程のまとめ、みたいになっていますので、字ばかり(余裕があれば画像もつけたい…)で読みづらいと思いますが、ご容赦ください。

(2)2マナ域

補食スリヴァー
筋力スリヴァー
補食は「自軍全体」、筋力は「すべて」のスリヴァーに+1/+1修正を共有します。いわゆるロード能力です。いずれも4枚固定で、デッキの土台をにないます。
よく対戦中に質問されますが、捕食・筋力自身にも修正が入ります。スリヴァーを使う側・使われる側ともに、現状でP/Tがどうなっているかはダメージ計算やプランニングにも直結しますので、常に把握しておくことが重要です。
使う側としては、常に頭の中でP/Tを処理できるようにしておきましょう(もちろん相手から質問があれば正確に答える必要があります)。また逆に使われてうまく把握できないような場合には、対戦相手にしっかり質問して確認するようにしましょう。
筋力に関する注意点が一つ。「すべて」のスリヴァーに影響するため、相手の多相(おもに変わり谷・カメレオンの巨像)のクロックが上がってしまうので、これを見込んだダメージの計算が必要になります。

また、ロード能力に関連して、スリヴァーでの戦闘でとくに意識・注意しないといけない点をまとめておきます。
人によってニュアンスが違うかもしれませんが、私はダメージの「連鎖」(あるいはタフネスの「階段」)というイメージで捉えています。

★戦闘の時に意識するダメージの「連鎖」(あるいはタフネスの「階段」)

少しおおげさな表現ですが、要は単純なことで、戦闘の際に一体でもスリヴァーが減ったらどうなるかを考えて戦闘をおこなう必要がある、ということです。
例えば対ジャンドを想定して、補食スリヴァーが3体並んでP/Tが4/4の時、相手の場にタルモゴイフ(仮に墓地に土地・ソーサリーの2/3)、闇の腹心がいて土地が1枚立っているとすると、これは戦闘をしかけるのにとてもリスクがあります。
仮に捕食3体で戦闘をしかけた場合、致命的な一押しなどの除去が1枚とんでくると、1体がサイズアップしたタルモゴイフにブロックされて一方的に負けてしまいます。またもう1体も闇の腹心にブロックされると、戦闘では3/3対2/1で勝つことはできますが、戦闘終了時に他の1体が死亡することで修正が減って2/2となり、2点の蓄積ダメージでこちらも死亡して、自分のスリヴァーが全滅してしまうことが予想されます。
※もちろん、除去がとんでこなければ12点が入り有利になるので、相手の手札枚数(マリガンの有無)やこの盤面にいたるまでの情報を加味してお願いアタック…ということも考えられます。まあこれは結果論になってしまうので、難しいですね(もう少し単純な盤面を想定すればよかったと後悔しています…笑)。

拡散スリヴァー
自軍スリヴァー全体に、「対戦相手がコントロールする呪文や能力の対象になるたび、2マナを支払わない限り、それを打ち消す」能力を共有します。当初3枚でしたが、シャドウ系デッキの流行以降、4枚固定になっています。
クリーチャーデッキ天敵の「瞬唱+除去」を1枚で牽制でき、初手にあればスリヴァーを展開する時間を大きく稼いでくれます。また、拡散の能力は重複するため、数が増えると要求するマナも4、6…と増えていき、とくに電解や燃焼など複数の対象をとる呪文や、歩行バリスタなど複数回対象をとる能力に効果的です。
一方、マナが伸びる中盤〜後半になるにつれて価値はさがってしまいますので、 ロードや接死などでクリーチャーとしての価値をどのように保つかが課題(と同時にスリヴァー・デッキのいわゆる「のびしろ」)になります。また、そもそも打ち消されない呪文には無意味なため、モダン環境では突然の衰微への注意が必要です(ただし、環境における衰微自体の数は減っています)。
注意点として、これは誘発型能力なので、相手の呪文や能力に対応して戦場に出しても誘発タイミングをすぎてしまいます。そのため、誘発させるには(時には相手の行動を読んで)先に戦場に出しておく必要があります。
例えば、瞬唱の魔導士キャスト→対象指定や、対人間での反射魔導師、対エルトロでのバリスタキャストなどに対応して、霊気の薬瓶を起動する、あるいはリスク&リターンを考慮しつつ集合した中隊を唱える、などの場面が考えられます。
なお細かいテクニックとして、変わり谷起動後であれば幽霊街・廃墟の地の能力に対しても誘発したり、対アドグレイスで稲妻の嵐を打たれた際、その能力を使って自分の土地を捨てて自分のスリヴァーを対象にとって拡散の能力を誘発させたり、なんてことも可能です(ただし、これは初見の相手には利きますが、慣れている相手には牽制くらいにしかならず、偏執狂ルートをとられてしまいますので過信はしすぎないように)。

マナ編みスリヴァー
宝革スリヴァー
マナ編みは「自軍全体」、宝革は「すべて」のスリヴァーに「タップ:好きな色1色のマナ1点を加える」能力を共有します。
この枠にはかなり紆余曲折があり、当初の不採用から、後述する集合した中隊の登場で3~4枚に増加→その後のモダン全体のスピードアップで2枚に減少→マナスクリューで展開できず負けることが多く、マナフラッド気味でも展開できる方がまだまし、ということで結局4枚の採用となりました。これも後述ですが、スリヴァーの巣を2→3枚にすることで、最低限のマナフラッドの改善を目指しています。
最近までの私のリストではマナ編みを4枚に統一していますが、他の方が指摘されるように、両者の併用は有効だと 考えています。以下、併用に関するメリット・デメリットです。
※なお、前回の画像のリストでは、マナ編み3、宝革1とちらしています。

メリット→同名カード対策
例:大渦の脈動、外科的摘出、反射魔導士、翻弄する魔導士…

デメリット→宝革が対戦相手の多相を強化
例:カメレオンの巨像、変わり谷…

現在のモダン環境にあてはめると、前者はジャンドやシャドウ系、後者はタイタンシフトやマーフォーク、スピリットなどが挙がります。
私の場合は、2017年のPPTQでタイタンシフトが流行し、それが対シャドウ系用にサイドボードに積んでいたカメレオンの巨像がネックになりました。サイド後、こちらの宝革が相手の巨像をマナクリにして一ターン早くコンボが決まったことなどもあって、マナ編み4の構成にしましたが、反射魔道士が増えた現在のメタでは、併用するメリットの方が大きいとも思います。

血吸いスリヴァー
自軍スリヴァ ー全体に、「スリヴァーが1体攻撃するたび、防御プレイヤーは1点のライフを失う」能力を共有します。(ドレインだったら神だった…><、カード名、血吸いなのに抜くだけ…)
タフネスはあがりませんが、擬似的なロードとして1枚採用しています。おもな用途は、打点の水増しと崇拝対策になります。
前者は最後の押し込みやチャンプアタック、また攻撃強制などでも相手のライフを減らせるため、PWのギデオン(3マナ、5マナともに)などに対しても有効ですし、マナがある限りブロッカーが出てくるソプターコンボなどにも対抗できます。
後者は一昔前のバントエルドラージ、最近だと緑白のカンパニー系で積まれる崇拝に対して、打点を落とさず対策になるので重宝します。最近では青白スピリットのサイドボードでも崇拝を見かけます。
ただ、基本的には攻めにしか使えない能力のため、環境を見ながら使う必要があります。
現状では0~1・2枚を行ったり来たりしていますが、環境には5c人間に強いカウンターカンパニーがいるので、1枚は採用すべきと考えています。

毒牙スリヴァー
自軍スリヴァー全体に接死を共有します。
最初は0枚でしたが、ジャンドなどクリーチャーの質で押し込むデッキや、シャドウ系などさほど多くない数のフィニッシャーに依存しているデッキに対する抑止力として1~2枚を採用しています。
また次第に先制スリヴァーの数が増えたことで、かなり使いやすくなりました。
対5c人間だと接死+先制+拡散 or 菅草などが決まると盤面が膠着するので、スリヴァーにとって重要な「数を並べる」ための時間を稼ぐことができます。
さらに、苦手なバーンやブリッツ、感染などの高速アグロに対するブロッカーや、呪禁オーラなどへの牽制としても役立ちます。
一方、対コンボでは2マナ1/1バニラのため、血吸いと同様に環境を見ながら採用する必要があります。
こちらも5c人間の影響で、アドグレイスなどメインほぼお祈りのデッキが減っているので、現時点では1枚は採用の価値があると考えています。

★その他に採用を検討した2マナ域

歩哨スリヴァー
自軍スリヴァー全体に警戒を共有します。モダンで貴重な2マナ域で素のP/Tが2/2のスリヴァーでもあります。
とくにマナ編みと並ぶと、攻撃しながらマナを確保できるので、菅草やスリヴァーの巣の能力も起動しやすくなります。
一方、そもそもP/Tがあまり高くないスリヴァーでは、警戒がさほど強くなく(毒牙や菅草、先制がいないとブロックに回れない)、また重複してもあまり有用な能力ではないため、数を積むことができず、現状では不採用になっています。

暗心スリヴァー
すべてのスリヴァーに「このパーマネントを生け贄に捧げる:あなたは3点のライフを得る」能力を共有します。こちらも貴重な素のP/Tが2/2のスリヴァーです。
対バーンでのライフゲインや、対死せる生での自殺手段といった役割で、過去に1~2枚採用したことがあります。
あくまで個人の使用感としては、前者はメインとしては他のデッキに強くなく(黒・緑の2マナと、色拘束の強いバニラという印象がぬぐえませんでした)、サイドとしては他のカードの方が優先されてしまいました。後者としてはフェアリーの忌み者があることやイフニルの魔神の採用で、死せる生にあわせて墓地に送っても解決後の盤面で負けてしまうことも多く、最終的に不採用になりました。時々、思い返したように試してはいるのですが…。

双頭スリヴァー
すべてのスリヴァーに威迫を共有します。
回避能力の追加枠としての役割を期待して、1枚入れたリストを数回試しました。
感触として、回避能力としては悪くはありませんでしたが、これも横這や血吸いなどと同じく、攻めてる時にのみ強いカードなので、現段階では優先して積むほどではない、という結論になっています。
ただし今後、戦闘ダメージを通すことが重要になるなら(例えば戦闘ダメージをプレイヤーに与えたら誘発する能力などが出てくるなら)、改めて検討する価値はあると考えています。

霊炎スリヴァー
すべてのスリヴァーを無色にする能力を共有します。過去に1〜2枚を試しに使ってみました。
おもな用途は、刻まれた勇者をはじめとするプロテクションと、精霊龍ウギンや全ては塵など無色に恩恵のあるカードへの対策になります。その他、天界の粛清をはじめとした色対策カードにも耐性がつくようになります。
書いているといいことづくめのように感じてきましたが、実際にはマナコストが黒・赤の2マナと色拘束が強く(素のP/Tは2/2であるものの)、また重複しても恩恵がない能力のため数を積む事ができず、必要な時に引けないというジレンマから、結局不採用となりました。

焼灼スリヴァー
すべてのスリヴァーに、無色1マナを払って生け贄にささげると、クリーチャーかプレイヤーかPWに1点のダメージをあたえる、あるいはスリヴァー・クリーチャーかプレイヤーかPWにあたえられる次のダメージを1点軽減する、という能力を共有します。これも素のP/Tが2/2のスリヴァーです。
実際のゲームで使用したことはまだありません。生け贄に対してダメージ・軽減量が1点と小さいのと、無色1マナというコストが重そう、というのが採用にいたらない大きな理由です(マナがかからない能力だったら用途が広がって〈モグの狂信者もびっくり〉強かったと思いますが…)。
最後の押し込みに使えそうなのと、毒牙などとの合わせ技も考えられるのですが、後者だと茨投スリヴァーでもよいのではというジレンマが…

羽軸スリヴァー
すべてのスリヴァーに、「タップで攻撃かブロックしているクリーチャー1体を対象に1点のダメージをあたえる」能力を共有します。
こちらも実際のゲームでの使用はありません。毒牙・歩哨と組み合わせれば強そうだな…と時々使ってみたくなるのですが、献身のドルイドなどのマナクリーチャーやシステムクリーチャーに触れないのがネックで、いつも脳内で終わってしまいます。

その他、昔はスリヴァー以外に闇の腹心なども使ってみたことがあるのですが…、アドバンテージ源としては悪くなかったものの、ジャンドなどと違って除去が少ないため自分自身で殴りにいくことができず、他のスリヴァーが攻撃にいくなか、攻撃もブロックもできず立ってることも多かったので、結局不採用になって今にいたっています。追加のドロー源は喉から手がでるほど欲しいけど…。

クリーチャーの2マナ域は以上になります。
次回は3マナ域とそれ以外に検討した諸スリヴァー、ならびにできればスペルまで解説したいと思います。
なお、案の定紙幅が膨らんでしまっていて、全体で4ないし5回の構成になる予定です。
「スリヴァー(Slivers!!)」デッキ解説①
「スリヴァー(Slivers!!)」デッキ解説①
「スリヴァー(Slivers!!)」デッキ解説①
○「スリヴァー(Slivers!!)」ってどんなデッキ?

デッキ名の通り、スリヴァーというクリーチャータイプ(部族)のシナジーに注目したデッキです。
スリヴァーの初出は「テンペスト」ブロック、その後「オンスロート」ブロックのレギオン、スカージと続き、モダンの範囲では「時のらせん」ブロック、「基本セット2014(M14)」「基本セット2015(M15)」に収録されています。

クリーチャータイプとしてのスリヴァーの特徴は、全てのスリヴァーが自身の能力を他のスリヴァーと共有することにあります。
そのため、数を並べることの恩恵が強く、複数体が場に並びはじめるミッドレンジの爆発力は、他のデッキにはあまり見られない大きな魅力です。
とくにスリヴァーは、12枚のロードが採用できる数少ない部族の一つであり、また共有する能力も多様なため、それらを組み合わせることで他の部族とは違った攻め方や構築ができることも、魅力の一つです。

スリーヴァー・デッキとしては、黎明期の「カウンター・スリヴァー」がとくに有名ですが、現在のレガシーでも組むことが可能です。モダンの場合には、M14で新規のスリヴァーが刷られたことでデッキとして成立しました。

以下のリンク先が現時点(2018年6月現在)の私のリストになります。また、現在試行中のリストが画像のものです。
http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD49868S/

モダンのスリヴァー・デッキは、注目するスリヴァー・カードによっていくつかのパターンがありますが、私のものは中速アグロの形をとっています。おそらく、現在のモダンではこの形が主流になっているかと思います。
上記の2リストも完成形と言うにはほど遠いと感じていますが、大まかなデッキの特徴や個々のカード選択、その紆余曲折などをご紹介することで、少しでもスリヴァー愛好家(好事家?)や興味のある方の参考になればと思います。


○デッキの概観

前述の通り、スリヴァーはクリーチャー・シナジーのデッキのため、複数体のスリヴァーが場に並ぶ状況をつくることが最も重要になります。
個々のカードの詳細は次項にまとめていますが、霊気の薬瓶や集合した中隊、またはマナ編み(宝革)スリヴァーなどを駆使して各種ロードを展開し、高クロックを風乗りスリヴァーによる飛行で対戦相手に与えていく、というのが理想的な動きです。
時には4ターン目のダメージが(1回の攻撃で)20点におよぶこともあり、この爽快感もスリヴァーの魅力ですね。

また、モダンでは各除去を瞬唱の魔道士で使い回すのが基本の動きの一つであり、クリーチャー主体のデッキの最初かつ最大の壁になりますが、これに対しては拡散スリヴァー・菅草スリヴァーを有効的に活用することで対抗が可能です。この2種は全体的なゲームスピードを落とすことで、擬似的にスリヴァーの得意なミッドレンジの状況を作り出す、という役割も担っています。

しかし、ミッドレンジの爆発力の反面、特に1~3ターン目の攻防に焦点をおく高速アグロや高速コンボ(例:バーン、ブリッツ、感染、カウンターカンパニーなど)や、ミッドレンジで「勝利する」ことを目指したデッキ(例:タイタンシフト、アドグレイスなど)に対しては、掛け値なしに不利と言えます。
ジャンドなどのミッドレンジやトリコなどのコントロールよりのミッドレンジ、純正のコントロールである青白、そのほか序盤に終盤のカードをプレイすることを目指したトロンなどのデッキも、一枚一枚のカードパワーがスリヴァーよりも高いため、長期戦になったり高マナ域のカードをプレイされる状況になってしまうと、途端に不利になります。

簡単にまとめると、スリヴァー・デッキはモダンの部族屈指の攻撃力を持っていますが、ゲームを通してその最大のパフォーマンスを発揮できる時間は非常に限られ、いかにその時間帯を有効活用し、相手のライフを攻められるかが、このデッキを使う上で第一に考えるべきことだと、私は思っています。


○個別のカード解説

それでは、順次個別のカードを、カードタイプ・マナコストごとに解説していきます。
また、参考のため調整の過程で不採用(あるいは当初から採用していない)になったカードも、その理由も含めて記録しておきます。

①クリーチャー
(1)1マナ域

風乗りスリヴァー
自軍スリヴァー全体に飛行を共有します。デッキの中の唯一の回避能力として、4枚固定の枠です。
高クロックを飛行で通していくのが、スリヴァーの理想的な動きになります。現在のモダンのメタデッキでは、4枚フル投入される飛行クリーチャーはある程度限定される、というのもポイントです。
現状でおもなものは人間(2種)、親和(2種+土地2種)あたりになります。そのほかM19以降はスピリットも増え、また天界の列柱、ホロウワンの炎跡のフェニックス、秘密を掘り下げる者・・・などなど挙げていくと割りと出てきますが、とくにそのなかでも飛行クロックが強いのが最初の2つです。
また相手の飛行への守りの面でも重要な枠になります。アブザンやトークンの減少で未練ある魂の数が減ってるのも大きいですね(マルドゥパイロマンサーのおかげで盛り返してはいますが、一時期ほどではないです)。
そのため優先的に除去の的になるので、状況によっては1ターン目から展開せず、後述の拡散や菅草を優先する場合もあります(レアケースですが、対緑信心の雲打ちは心の隅にでも)。

先制スリヴァー
自軍スリヴァー全体に先制攻撃を共有します。当初0枚から、1、2枚と、段々と採用枚数が増えました。
そもそもスリヴァーの課題の一つとして、1マナ域の頭数が揃っていないことがあり、それは前述の高速アグロへの弱さへと直結しています。
最初の採用のきっかけは対ドレッジで恐血鬼を受け止めることにありましたが、実際の対戦をこなすなかで、対親和(頭蓋囲いルート)だったり、先制攻撃がとくにブロック時に有利な能力のため、盤面をぐだらせて展開する時間を稼いでくれたりと、1マナ域として充分すぎる働きをしてくれることがわかりました。後述の毒牙スリヴァーの接死との相性はいわずもがなです。
ただし、クロック向上には貢献しないので、現時点では2枚に留めています(3~4枚のリストを以前にレガシーで見かけたので、ここの数はまだ検討の余地があるかもしれません)。

★その他に採用を検討した1マナ域
横這スリヴァー
全てのスリヴァーに側面攻撃を共有します。
側面攻撃は、「側面攻撃を持たないクリーチャーがこのクリーチャーをブロックするたび、ターン終了時まで、ブロックしているクリーチャーは-1/-1の修正を受ける」というややこしい能力で、もはや過去の遺物って感じですね。
しかし、相手側クリーチャーが「ブロックするたび」修正が入るので、例えば1/1の2体にブロックされても両方にマイナス修正が入るなど、複数ブロックや若き紅蓮術士、未練ある魂などに対して地味に牽制になったりします。
一時期疑似ロードとして1〜2枚使ったこともありますが、性質上攻めている時にのみ強く、負けている受けの盤面では弱いことから結局不採用になりました。

悪性スリヴァー
全てのスリヴァーに有毒1を共有します。有毒は未来予知のみに収録された能力で、感染の登場でおそらく今後日を見ることはないでしょう。
有毒Nは、プレイヤーに戦闘ダメージをあたえた場合にN分の毒カウンターをあたえる能力で、感染とは違って通常の戦闘ダメージも入ります。このカードはハルクフラッシュでの使用例で有名ですね。
貴重な1マナ域であることや、異なる角度からのダメージレースができることから、テューンスパイクや白金の帝像が増えた時に試したことがあります。
一度、帝像の返しに骨鎌スリヴァー(二段攻撃共有)とあわせて毒勝ちしたこともありますが、結局は通常のクロックが上がらず、毒カウンターをためても悪性を除去されてしまうとプランが崩壊してしまうため、不採用になりました。

クリーチャーの1マナ域は以上になります。
次回はクリーチャーの2マナ域から解説いたします。

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

まだテーマがありません

この日記について

日記内を検索